以前、有名な女流建築デザイナーのセミナーを聞く機会がありました。終了後に軽食を食べながらの親睦会があり、たまたまその女流デザイナーさんが近くに来たので、商業施設などの内装に、もっと木を使って欲しいと言ったところ、木は嫌いだから使わないと言われてしまった…
その理由は「私は自分のイメージでデザインし、配色を考える。木は木目があって自己主張するから、自分のイメージとぶつかる。しかも木目は板1枚1枚違うから統一感が無く、張ってみないと仕上りのイメージがわからない。そんな素材は使えない」と言うのです。
確かにペイント仕上げや壁紙ならサンプルから完成した内装のイメージを掴みやすい。それに比べて無垢の木の内装材は赤身あり、源平あり、白太ありで、たとえ源平で統一したとしても赤身と白太の混ざり具合は1枚ごとに異なります。これと同じものを100枚と言われても揃えられません。
しかし、私はその「板1枚1枚違う」と言うことが、無垢の木材の良さだと思っています。部屋の4面に羽目板を張っても、壁ごとに感じが違う。4人子供がいても、1人1人、顔も性格も異なる。当然のことです。木目や色合いは個性なのです。
もし、生徒の個性を無視して、同じ考え方、話し方などを強要する学校があったら、それは教育とは言えません。生徒個人個人の個性を伸ばすのが、真の教育だと思います。
もちろん、木目は個性が強すぎて嫌いだと言う建築デザイナーがいても良いとは思いますし、非難するつもりはありません。それも建築家の個性です。嫌いな人は使わない、好きな人は使う。それで良いのでしょう。
当然のことながら、当社は木が好きな人たちを対象に、もっと木を好きになって欲しい。木の良さを、より深く知って欲しいと思いながら、商売をしています。